作品を選んでドラマに出る人が少ない中、このメインキャスト4人は作品を選んで集まった感が強い。坂元裕二の脚本だからだろう。第一話を観てみたら、期待通り、いやそれ以上だった。だから勢いでメモを兼ねてレビュー的なものを書いてしまおうと思う。
■ 演技が堪能できる
ドラマを観ていると、演者達の演技をひたすら観ていたいと思うことが時々ある。もう脚本は彼らが演技するための口実に成り果ててもいい、ずっと観ていたいと。『カルテット』でもそんな感覚が味わえそうだ。松たか子、満島ひかり、松田龍平、高橋一生。この4人の演技を今更どうこう言う必要はないだろう。確かに楽器を弾くときははまだ覚束ない感じだが、時間が経てばそこそこ見られる位までは持っていってくれると思う。満島の演技のこととか書きたいところだが、今後のネタバレ要素を含んでいそうなので、今は止めておく。間違いなく4人の演技バトルがこのドラマの見所のひとつだろう。
脇役にも期待できると思う。『ゆとりですがなにか』で存在感を見せた吉岡里帆。出番は少なかったが、闇を抱えてそうな印象を上手く残したと思う。八木亜希子は『あまちゃん』のときも素晴らしかったが、今回も役にはまれば期待できそうだ。
■ 唐揚げとレモン
巻真紀(松たか子)が話の中心になっている。そこらにあるキラキラネームよりもよっぽどタチが悪い名前なので、途中まで真紀の結婚自体が妄想なのではないかと疑っていた(笑)が、どうやら結婚はしていたらしい。最初真紀の声は聞き取れないくらいのピアニッシモ状態だったが、だんだん大きくなり、最後の方の「A(アー)下さい!」ではフォルテくらいにはなっていた。単に人見知りがだんだん他の3人に慣れてきたことを表すのか、それとも他に意味があるのか...
世吹すずめ(満島ひかり)は真紀の義母(もたいまさこ)から依頼される形で真紀に近づく。家森諭高(高橋一生)と別府司(松田龍平)は、どうやら自発的に接触を試みたようだが、まだ断定できない。都合よくカルテットが組めるようになっていたのは、誰かが意図的にそう仕向けた可能性もあるからだ。
セリフの掛け合いでダダーと進んでいくところが坂元裕二の持ち味の一つなのだろうが、人によっては鼻につくかもしれない。唐揚げにレモンかける、かけない、の話も新鮮味があるわけではない。ただ話の内容よりも、家森がウザいくらいのコダワリくんであるとか、レモン勝手にかけちゃう派(別府、すずめ)、かけない派(家森、真紀)というキャラであることは、今後につながってくると思う。「レモンをかけた唐揚げは不可逆」とも言ってるので、4人はもう後戻りできない状態にある、ということかもしれない。
■ あしたのジョー
4人はもはや音楽の夢を追っていい年ではない。夢を実現させるなら、今が最後のチャンス、といったところか。その夢の成れの果てのような形で出てきたのがベンジャミン瀧田(イッセー尾形)。高橋と尾形がイッセーつながりなのは偶然なんだろうね(笑)。真紀は瀧田を強引に追いやる形で自分たちのカルテットを後釜にすえる。自分が嘘をついているのに他人の嘘は許さない、というよりも、音楽の道を進むしか無いという決意の表れか。「愛しているけど好きじゃない」と言った夫への未練を断ち切りたいという思いもあるのだろう。真紀自身「夫婦は別れられる家族」と言っている。
あしたのジョーは最後に白く燃え尽きる。瀧田も再登場してそういう姿を見せるのかも知れない。
■ ドーナツの穴
「何かが欠けてる奴が奏でるから音楽になる」という瀧田の言葉に触発されたのか、別府は急遽カルテットの名前を「ドーナツ ホール」に変えてしまう。おそらく4人は欠落をかかえており、それが何かは徐々に明かされていくことになるのだろう。真紀の場合、それは夫のようであったが。
■ ティッシュと天気
真紀とすずめが家森のティッシュ(紫式部!)を使うくだりも、何か意味ありげ。ティッシュは一つ取り出せば次がでてくる。数珠つなぎのように何かが出てくる前フリか。二人とも天気は曇りが好きだと言う。おそらく今後対峙することになりそうな二人だが、もしも違う出会い方をしていたらいい友達になれたかも、ということなのか?
■ 散りばめられたヒント
初回からこんなにヒントを出していいの?というくらい、あちこちに散りばめられている。4人はそれぞれ嘘をつき、片思いだという。真紀の嘘は夫婦関係だった(実際には夫は一年前に失踪)。別府の嘘は同僚の彼女がいるのに、どうやら真紀に気があるらしいこと(ひねりが無ければ)。この辺は表面にはっきり出ているところ。他にも何故すずめに声がかかったのかも何となく想像できる(ヒントは靴下、というより平熱の高さ)し、家森の嘘もだいたい見当がつく。家森の場合、あるフラグがバンバン立っているので、真相が分かったとき、高橋一生ファンから悲鳴が上がるかもしれない。その前に『池袋ウエストゲートパーク』の電波くんでも見て、悲鳴の練習をしておいた方がいいかも(笑)。
4人はそれぞれの思惑を持ちながら軽井沢の別荘で共同生活する。嘘がバレていくにつれ、サスペンス感が高まっていきそうだ。中盤あたりで4人の秘密が全て明らかになる山場がくる構成なのかもしれない。で、さらにその先に何かがある、みたいな。坂元裕二の場合、終盤ガタつく不安があるので、今回はちゃんと最後までプロット練っておいてくれることを祈っている。
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