2017年3月12日日曜日
『カルテット』なぜ第8話が『舌切り雀』なのか
『カルテット』第8話は、日本の昔話である『舌切り雀』がベースになっている。前回のブログでは詳しく書かなかったので、補足として書いておこうと思う。
巻鏡子→おばあさん、根本(チェロを教えてくれたおじいさんの「入れ替わり」的存在でもある)→おじいさん、と考える。すずめは鏡子の作った料理を勝手に食べ始めてしまった。そしてバイト先で鉄板焼きに誘われたと嘘をつく。『舌切り雀』では、勝手に食べたことに怒ったおばあさんは雀の舌を切ってしまうが、すずめは別府に「舌を抜かれる」。もちろん比喩的な意味でだ。エンマ大王は嘘つきの舌を抜く。別府がなぜエンマなのかはこちらを参照。
舌を抜かれた状態とは、別府がまだ真紀のことが好きなのをすずめは知っているので、自分の本当の気持ちを伝えられないということ。おじいさんへの贈り物は、年寄りしかいない不動産屋に若い労働力。そして根本に「眩しいね」と言わせた、恋する心のきらめきだと考えてもいいかもしれない。『舌切り雀』ではおばあさんも雀から土産をもらうが、中身は化け物だった。鏡子の場合は、真紀が正体不明の女だということを知らされる。
とっ散らかった『舌切り雀』だが、こういう解釈もできるということで。脚本家がこの昔話の要素をあちこちに分散して埋め込んだのは、今回の脚本を書くにあたってあくまで元ネタとして使ったか、あるいは簡単に『舌切り雀』だと分かってしまうと、最後(鏡子が恐怖を感じるものに会う)の予想がついてしまうので、あえて分かりにくくしたとも考えられる。
『舌切り雀』は富山県(そう、刑事が来たところだ)を発祥とする説もあるようだが理由は分からない。元々は古典(『宇治拾遺物語』)にあった話なので、それが富山に関係するのだろうか?この昔話の原型は『腰折れ雀』で、腰を痛めた鏡子はヒントでもあったのかもしれない。前に真紀が鏡子をマッサージするという伏線があったので、鏡子が腰を痛めてもそれほど不自然には感じなかった。『腰折れ雀』まで意識していたなら、かなり用意周到だ。
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